文化を守る「ノブレス・オブリージュ」は、やがて民衆へ。

Kimono Solutionwear™ と商標登録した米タレントのキム・カーダシアンさん。補正下着をソリューション(=解決策)と表現していることに、上手いなあと感心してしまいました。

ルイ・ヴィトンの「KIMONO」というバッグは何も言われなかったところをみると、問題の在り処は「KIMONO」を製品名に使ったことではないのかもしれません。

 

これに関して「文化」の盗用という言葉が頻繁に使われているのを見て、ふと、文化ってなんだろう……と調べてみたくなりました。

カテゴリとしては、技術、学問、芸術、道徳、宗教、政治。抽象的に表現すると、未来永劫、残しておきたいもの、守りたいものでしょうか。

これまで文化を守ってきたのは、富裕層や資産家と呼ばれるお金を持つ人でした。節税や資産運用という目的もあったかもしれませんが、そのおかげで私たちは貴重な文化財を、今生目にすることができます。

富裕層向けの資産防衛メディアに「絵画の価値」についての記事がありました。

つまり、美術品にお金を出すとは、私的な所有欲を満足させるだけではないのです。有名な美術品は、世界遺産と同じように人類史上の財産ですから、天災などで失われないように、きちんと保存して後世に伝えていく必要があるのです。私が思うに、人類の文化遺産としての美術品を所有することは、私的な所有というよりは、一時的に預かるような感覚に近いと思います。

これが「ノブレス・オブリージュ」ってことでしょうか。
「身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある」欧米社会における基本的な道徳観です(コトバンクより)。

 

しかし今、「文化」と呼ばれるものに、変化の予兆があります。

発信の自由によって「文化」は細分化され、カテゴリが更に増えるでしょう。食べ物、着る物、住み家、読み物、考え方、感動したもの。

インターネットの存在により、それが、たった一人でも、自分が生きている間だけだとしても「文化」と主張することは可能になり、 同時に受け入れられ易い世の中になっています。

 

そんな中で、面白い試みを見つけました。
光本勇介さんの書籍「実験思考」です。

読み終わった後、0円から1000万円までの値段を自分で設定して、支払うという、書籍の値段を読者に委ねるという実験でした。

現在、1億円超えたので課金は停止されており、WEBサイトに結果が掲載されています。まさに「書籍」という「文化」を民衆が支えた!という結果です。

 

先細りである伝統「文化」も、こんな時代だからこそ、市場価値を測るために、感情移入してもらうために、自分事として捉えてもらうために、民衆をもっと上手く利用すればいいのにと思います。

書籍、音楽、映画、絵画、それぞれ受けとる人の感動の量は違うのだから
払う値段が違ってもよいと思いませんか?

 

マネタイズの方法は「文化」と共に変化しようとしています。

価格は「決められている」時代から「自分が決める」時代に。

民衆はすでに「文化」を守る力を持っているのです。

 

文:森下 えみ
編集:高橋 大希ち

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